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「全身の筋肉」- 前腕部(伸筋群)

腕撓骨筋(わんとうこつきん)

起始:上腕骨外側縁の下部、外側上腕筋間中隔から起こり、橈側前方に向かって弓状に突隆する筋腹を作って長い腱に移り、前腕の撓側に下る
停止:橈骨の茎状突起の上方(母指筋と交叉する)
作用:前腕を屈するとともに、これをわずかに外転する
神経:橈骨神経

腕撓骨筋は肘を屈曲する作用がありますので本来なら屈筋群に入りますが、発生学的に見て伸筋群に入れられます。

正面に立って腕を自然におろし、手のひらを正面に向けた姿勢を「解剖学的肢位(かいぼうがくてきしい)」と呼びます。その肢位で前腕外側部に大きな膨らみを持つのが腕撓骨筋です。

筋皮神経に麻痺が起きて上腕二頭筋、上腕筋が働かなくなっても、腕撓骨筋が働くことで肘の屈曲が可能になります。

この筋は橈骨に付着するので手首の運動には関与しません。

親指を上に向けた状態で肘を屈曲することで、この筋が明瞭になります。

長撓側手根伸筋(ちょうとうそくしゅこんしんきん)

起始:腕撓骨筋の下方で、上腕骨の外側縁、外側上顆および外側上腕筋間中隔から起こり、長い腱となって前腕の撓側を腕撓骨筋の後側に沿って長母指外転筋と短母指伸筋との下をこれと交叉して通り次いで伸筋支帯の第2管をへて手背に出る
停止:第2中手骨底の背面
作用:手根を伸ばすとともにこれを外転する
神経:橈骨神経

「撓側」から「手根」に伸びる「伸筋」という意味の名前です。
下記の「短」に対して「長」とつきます。「撓側手根伸筋」は2つあるということです。
長い名前ですが覚えにくいことは無いと思います。

「長」は第2中手骨底に付き、「短」は第3中手骨底に付きます。

短撓側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)

起始:上腕骨の外側上顆、橈骨輪状靭帯およびこの筋と(総)指伸筋との間にある腱板から起こり、長撓側手根伸筋腱の後ろにそって下り、腱となって伸筋支帯の下の第2管を通り手背に出る
停止:第3中手骨の底
作用:手根を伸ばし、同時にこれを外転する
神経:橈骨神経深枝

「長」に対しての「短」撓側手根伸筋です。

指伸筋(ししんきん)

起始:短撓側手根伸筋とともに共通頭(この共通頭は上腕骨の外側上顆および前腕筋膜から起始する)から起こり、前腕の後面下部では筋腹は4本の腱に分かれ、伸筋支帯の下の第4管を通って手背に出る
停止:第2~第5指の背側で指背腱膜に移るが、腱の末端は基節骨の底で3つに分かれ、その中央のも
のは中節骨の底に付き、両側のものは末節骨の底につく

作用:第2~第5指を伸ばし、同時に手根を伸ばす
神経:橈骨神経深枝

指伸筋は第2~第5指の中節骨、末節骨に付着します。
「ボタン穴変形」や「マレットフィンガー」と呼ばれる指の損傷(変形)に関わってきます。

小指伸筋(しょうししんきん)

起始:小指伸筋筋膜から起こり、(総)指伸筋の第4腱の尺側に沿って下り、伸筋支帯の下の第5管を通り手背に出る
停止:小指の背側で、2つに分かれて指背腱膜に移る
作用:小指を伸ばす
神経:橈骨神経深枝

小指伸筋は小指を伸ばす筋です。
指伸筋も小指に付着していますので、小指
(示指伸筋も※後述)には2本の筋(腱)が付着します。
ワイングラスを持つときなど無意識に小指が立ってしまうのは、強く握らないようこの筋が働いているかもしれません。

尺側手根伸筋(しゃくそくしゅこんしんきん)

起始:[上腕頭]上腕骨の外側上顆、肘関節の撓側側副靭帯
   
[尺骨頭]尺骨の後面から起こって、前腕後面の最も尺側を下り、伸筋支帯の第6管を通って手背に出る

停止:第5中手骨底の背面
作用:手根を伸ばし、同時に尺側背屈をなす
神経:橈骨神経深枝

伸筋の中で最も内側に位置します(解剖学的肢位)。
5中手骨底に付着するので、手首の伸展の他に尺屈(尺骨側に曲げる)も行います。

回外筋(かいがいきん)

起始:上腕骨の外側上顆、撓側側副靭帯、橈骨輪状靭帯、尺骨の回外筋稜から起こり、前腕(上部)後面の深部を撓側下方に向かう
停止:橈骨の後面をまわり、橈骨上端1/3の撓側面で、円回内筋付着部の上方につく
作用:前腕を回外する
神経:橈骨神経深枝

長い筋が多い伸筋群の中で短めの筋です。
上腕骨の下部から橈骨の上部に付着しますので手首の運動には参加しません。

上腕二頭筋とともに回外の動作をします。

長母指外転筋(ちょうぼしがいてんきん)

起始:尺骨の骨間縁、前腕骨間膜、橈骨後面から起こり、短母指伸筋とともに相ならんで下撓側方に斜めに走り、前腕下部で長および短撓側手根伸筋腱の上を撓側下方に進み、腱に移行して伸筋支帯の下の第1管を通って手根の母指側にいく
停止:第1中手骨の底につく
作用:母指を外転し、かつ手を撓側に屈する
神経:橈骨神経深枝

「母指〇〇筋」など筋名に「母指」とつくものはいくつかありますので、こんがらがりやすい筋の1つです。

長母指外転筋は指骨(基節骨、末節骨)に付着せず、中手骨に付着します。

短母指伸筋(たんぼししんきん)

起始:前腕骨間膜・橈骨から起こり、長母指外転筋と一緒になって下撓側方に斜めに走り、前腕下部で長および短撓側手根伸筋の腱の上を交叉しつつ撓側下方に向かい、腱に移行し伸筋支帯の下にある第1管を通って手根の母指側にいく
停止:母指基節骨の底
作用:母指基節を伸ばし、母指を外転する
神経:橈骨神経深枝

短母指伸筋も母指に付着します。この筋は基節骨に付着しますので、上記の長母指外転筋より遠位に付着します。

「ド・ケルバン病」
長母指外転筋腱と短母指伸筋腱は、橈骨の茎状突起という硬い骨の上を通過します。

母指は指の中でも特に仕事量の多い指です。
長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が硬い茎状突起の上を繰り返し通過することで摩擦が起き、その結果炎症を起こします。

長母指伸筋(ちょうぼししんきん)

起始:前腕骨間膜、尺側手根伸筋筋膜から起こり、長母指外転筋および短母指伸筋の尺側を下行しつつ腱となり伸筋支帯の第3管を通って手背に出る
停止:母子末節骨の底につく
作用:母指を伸ばす
神経:橈骨神経深枝

長母指外転筋や短母指伸筋の内側を走行します。

母指を伸展させると、長母指伸筋腱と短母指伸筋腱が浮き出ます。両腱の間にくぼみができ、そこを「タバコ窩(たばこか)」や「スナッフ・ボックス」と呼びます。

示指伸筋(じししんきん)

起始:前腕骨間膜、尺骨の後面、尺側手根伸筋筋膜から起こって、長母指伸筋の尺側をこれと並行して下り、(総)指伸筋腱とともに伸筋支帯下の第4管を通って手背に出る
停止:第2指に行き、(総)指伸筋の第2指腱とともに指背腱膜に移行する
作用:示指を伸ばす
神経:橈骨神経の後骨間神経

示指伸筋も小指伸筋と同じように、指伸筋とともに示指の伸展に働きます。

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