【整体コラム】の「見分けるべき危険な腰痛」内の記事で、「腰痛を起こす背骨の病気」を深掘りします。←こちらもあわせて御覧ください
危険な腰痛とは
接骨院、整体などの治療院では扱えないような、腰椎の細菌感染や腫瘍による腰痛です。
脊椎カリエス(せきついかりえす)
化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)
脊椎腫瘍(せきついしゅよう)・脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)
などがあります。
今回は「危険な腰痛 脊椎カリエス編」です。

脊椎カリエスとは?
結核菌が脊椎に感染した病気です。
結核は結核菌が空気感染することで起こる病気です。
菌を吸い込んだからといって必ず発症するわけではなく、免疫力が下がり抵抗力が落ちているなどの状態で、3割ほどの人が発症するといわれています。
主に肺に症状を出しますが、結核菌が血液やリンパに乗って全身に移動することもあります。
脊椎に運ばれ病巣を形成すると、脊椎カリエスとして発症します。
脊椎の部位別では胸椎と腰椎に多く、頸椎に起こることはまれといわれています。
まず脊椎の支柱部分である椎体が破壊され、次にクッションである椎間板に波及します。
進行すると、上下に隣接する椎体にも広がっていきます。
脊椎カリエスの原因となる結核は、明治から昭和20年代にかけて日本国内で死亡率が1位で「国民病」といわれた病気でした。
しかし医療が進んだ昭和50年代以降は、結核患者が激減していきました。
ところが近年結核が増えてきており、また注意が必要になってきました。
※ちなみにカリエスという言葉は「骨の炎症」のことで、歯科用語では虫歯を意味します。
脊椎カリエスの症状は?
初期では、背中や腰に痛みがあったり動かしにくかったりします。
感染している辺りを叩くと痛みを感じるのも特徴です(叩打痛)。
化膿性脊椎炎より進行が遅く、痛みも緩やかといわれています。
脊椎を壊し脊髄に影響が及ぶと、排尿障害や排便障害を起こすこともあります。
全身症状としては倦怠感や微熱が出ます。
食欲が減ってきたり、体重減少が起きたりもあります。
進行すると「Pott(ポット)の三徴候」といわれる、亀背(後弯変形)、冷膿瘍、脊髄麻痺が認められます。
脊椎カリエスの診断は?
脊椎カリエスの診断には血液検査に加えてレントゲン撮影、CT検査、MRI検査などを行います。
背骨が壊れて楔状に変形していたり、クッションの部分が狭くなったりします。
肺結核を合併していることが多く、胸部レントゲン撮影も行います。
早期には脊椎などの変形がないこともあり、レントゲン撮影で問題ないからといっても安心はできません。
脊椎カリエスの治療
保存療法(手術をしないこと)が基本になります。
リファンピシンやストレプトマイシンなど、結核の薬による化学療法が基本になります。
結核菌が耐性を持たないように、2種類以上の薬を組み合わせて使います。
保存療法で効果がない場合や、背骨が破壊されたり下半身が麻痺したりした時は手術が必要になります。
手術をしても治療には1年ほどの長い時間がかかるので、焦らずに忍耐強く治療を続けなくてはいけません。
まとめ
脊椎カリエスの特徴として、
- 背中や腰の痛みや、動かしにくさ
- 感染部を叩くと痛みが出る
- 倦怠感や微熱、食欲不振や体重減少
などがあります。
正岡子規も脊椎カリエスで無くなったことで有名です。
しかし最近では結核に対して治療法も確立されており、当時ほど怖い病気では無くなりました。
ただ、普通の腰痛と間違えて治療を続けていくうちに症状が進行してしまい、背骨の変形などを起こすこともあります。
上記のような症状を伴う時は、きちんと検査することが大事になります。